金色の死

「私」の視点から友人の岡村君の生涯を描いた物語である。「私」と岡村君との芸術をテーマとしたディスカッションが見どころとなる。そして、岡村君の芸術論は作者自身の考えといえるだろう。

この『金色の死』については、三島由紀夫が『作家論』で細かく分析をしており、『金色の死』より先に『作家論』を読んでしまったので、どのような書評を書いたとしても、自分が幼稚に感じてしまい、なかなか筆が進まない。

かといって、同じ文庫本に収録された、『お艶殺し』の感想を書くのは、それはそれで難しい。

この『金色の死』を執筆したのは、谷崎が30に満たない歳だということだから、今の私よりも年下だ。そのときに谷崎が芸術についてどのように考えていたかが知れるのは面白い。

しかし、岡村君だけが谷崎氏の代理人というわけではなく、境涯に共通点もある「私」も谷崎氏の代理人の一人である。この二人の対比というのは、谷崎氏自身の性質を2つに分割し、それぞれを掘り下げる過程で誕生したペルソナではなかろうか。理想と現実の対比、現実は理想に憧れを持つと同時に、先の破滅を見る。作品としての完成度に隔たりがあるけれども、三島由紀夫の『禁色』の美少年と老作家の関係性にも類似性が見られるのではないか。

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