日本文学

谷崎潤一郎

猫と庄造と二人のをんな

『吾輩は猫である』に並ぶ、猫文学の名作。猫のリリーに掻き乱される男女の三角関係とその心模様を描いた作品。 猫を異常に可愛がる男と猫に嫉妬するし追い出そうとする女、そして猫を引き取って男との復縁に利用しようとする女、三者三様の思惑が渦...
谷崎潤一郎

春琴抄

「鵙屋春琴伝」という一冊の書物と知人への取材から紡がれる、春琴と佐助の奇縁を描いた物語。谷崎文学最高傑作の呼び声も高い。 改行、句読点、鈎括弧などの記号文字を極力使わない特徴的かつ実験的な文体で書かれている。かな文学の特徴を継承し、...
谷崎潤一郎

武州公秘話

この本のページをめくると、序文が漢文であることに驚く。そしてこの小説を読み進めることに尻込みする。結果、漢文は序文だけだったので安心したのだが。えらいもので高校時代に学んだ淡い記憶を頼りに、なんとなくわかる程度には読むことができた。おおよ...
谷崎潤一郎

盲目物語・聞書抄

『盲目物語』の舞台は、戦国時代。織田信長の妹であり、浅井長政の妻であったお市の数奇な生涯を、按摩として仕えた盲人の視点で語った歴史小説である。 谷崎文学の一人称形式といえば、まず『痴人の愛』が浮かぶ。さらに、すべて大阪弁で綴られた『...
谷崎潤一郎

乱菊物語

四十代半ばの谷崎潤一郎が、「大衆小説」として、各所専門家からの制約的な意見からいったん距離をおいて、想像力のまま自由に筆をふるおうと書き出した。 舞台となる室町時代の戦乱と、主要な登場人物の一人である「お菊」の名から、この物語の題と...
谷崎潤一郎

蓼食う虫

「蓼食う虫も好き好き」 これは、蓼のような苦味のあるものでも好んで食べる虫がいるように、人の好みはさまざまで一概にはいえないという意味の慣用句だ。使われる場面といえば、異性の好みを仲間内で話すときであろう。いわゆる「B専」というやつ...
谷崎潤一郎

卍まんじ

2組の男女の愛欲渦巻く関係が「卍」模様のように交錯しながら破滅へと向かってゆく物語。両性愛者の美女に翻弄された女が自らの異常な体験を告白する形式で描かれている。 舞台は大阪やであり、この告白も大阪弁で行われているところに、この作品の...
谷崎潤一郎

痴人の愛

カフェで出会った美少女を引き取り、理想的な女に育てようとした、真面目な男が、奔放な正体を徐々に現してくる少女に対し、振り回されながらも依存性を強めていった過程を、男の一人称告白体で描いた物語。豪奢な表現力と繊細な構成力とが合わさった谷崎文...
谷崎潤一郎

人魚の嘆き

谷崎潤一郎の短編。異国から持ち込まれた人魚とその美に魅了された貴公子の物語。どこか陰鬱で冗長な大人の童話。 ストーリーはシンプルで特別な真新しさもない。しかし、語彙や表現力はさすがで、そのシンプルなストーリーへ肉付けをし、豪盛な文章...
谷崎潤一郎

金色の死

「私」の視点から友人の岡村君の生涯を描いた物語である。「私」と岡村君との芸術をテーマとしたディスカッションが見どころとなる。そして、岡村君の芸術論は作者自身の考えといえるだろう。 この『金色の死』については、三島由紀夫が『作家論』で...
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