読書の後

谷崎潤一郎

刺青

谷崎潤一郎本人が処女作だとしている短編。ある腕ききの刺青師が、刺青師としての宿願を果たす物語。この10ページほどの短編には、快楽や美、そしてフェティシズムなどその後の谷崎文学の主題となるものが凝縮されている。彼の文学においては、快楽や美と...
読書論

生れつき鈍い感覚をも鋭く研く/文章読本

文章読本の目的 冒頭部分にこうある。〈云わばこの書は、「われわれ日本人が日本語の文章を書く心得」を記したのである。〉つまり、上手に書くための本である。しかし、読書論のカテゴリーで語るものではないかというとそうではない。文豪が長年の経...
川端康成

少年

川端康成が中学時代に寄宿舎で一室に暮らした清野少年。彼との愛は、中学時代の日記、高等学校時代の手紙、大学時代の「湯ヶ島での思い出」と、学生時代長き渡って綴られていた。五十歳になり全集を出す際、この三つを読み返し、並べ、言葉を添えながら結び...
読書論

生命ある文章へのノスタルジア/新文章読本

新文章読本の目的 〈本稿は、文章への素直な道に読者を誘うのが目的〉と頭の方で述べられている。「素直な道」という言葉の意味するところが明確にはわからないが、「誘う」と言うからには、読者を文章の魅力に気づかせることを目的としているのだろ...
川端康成

川端康成・三島由紀夫往復書簡

昭和20年から昭和45年の25年に渡る師 弟関係にあった文豪二人の書簡集。 昭和20年と言えば、三島由紀夫は20歳。大学卒業を控え、文壇入りに意気込んでいた時期である。そんな中、川端康成をたいぶ頼りにしていたようだ。尖りにとがった批...
川端康成

川端康成初恋小説集

初恋小説集の「初恋」とは、川端康成が22歳の時に婚約した、当時15歳の伊藤初代との交際のことを指す。この交際から婚約、そして婚約破談までを事実に基づき描いた作品群は、「ちよもの」と呼ばれ、小説や紀行文、随筆など様々なジャンルで描かれている...
川端康成

古都

〈古い都の中でも次第になくなってゆくもの、それを書いておきたいのです。〉 これは、川端康成が文化勲章の記者会見で『古都』の執筆動機について語った言葉だ。その示す通り、『古都』は全9章からなり、「春の花」「尼寺と格子」「きものの町」は...
川端康成

眠れる美女

『眠れる美女』は、『舞姫』から始まり、『みづうみ』へと続いた「魔界」のテーマに連なる、川端の後期を代表する作品で、全5章から成る中編小説である。 ある海辺の宿では、既に男としての機能を失った老人たちに、全裸の娘と一晩添寝する逸楽を提...
川端康成

女であること

川端康成の作品は、霞がかった幻想的な世界に、漂い流れていくような読書感がある。この夢の中のような浮遊感は、もののあわれの『雪国』や『山の音』でも、魔界の『みづうみ』や『眠れる美女』でも、共通していたように思う。 しかし、この『女であ...
川端康成

みづうみ

〈湖の多くは遠いむかし地の奥から火を噴きあげた火口に水をたたへてできた。火はしづまる時が来るが、水には時がない。〉 『みづうみ』発表から7年後、川端は編集を担当した写真集『湖』の「まえがき」で、湖について述べた一文である。 こ...
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